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はじめに|なぜエンドクライアントと制作チームの摩擦が生まれるのか
プロジェクトを進める中で、エンドクライアントと制作チームの間に摩擦が生じることは珍しくありません。
クライアントからの修正指示に対して、制作側が「なぜこの変更が必要なのか?」と疑問を持つ。
逆に、制作チームがこだわりを持って仕上げたデザインに対し、クライアントが「もっとシンプルに」と注文をつける。
こうしたやりとりが積み重なると、お互いにストレスを抱え、プロジェクトの雰囲気が悪化してしまうこともあります。
摩擦が生じる原因はさまざまですが、主に次のようなケースが挙げられます。
- クライアントと制作チームの視点の違い
- 認識のズレによる「思っていたのと違う」問題
- 制作チームのこだわりと、クライアントのビジネス的な要求の対立
- 修正・要件変更の進め方が曖昧なまま進行することによるトラブル
こうした問題を防ぎ、スムーズな進行を実現するために必要なのが、ディレクターの適切な介入と調整です。
この記事では、エンドクライアントと制作チームの摩擦を減らし、プロジェクトを円滑に進めるためのディレクション技術について解説します。
1. エンドクライアントと制作チームの摩擦が生まれる理由
クライアントと制作チームの視点の違い
クライアントと制作チームは、同じプロジェクトに関わっていながらも、求めるものが異なります。
クライアントの視点
- ビジネス成果を最優先する
- 「競合と差別化できるか?」を重視
- 修正を「サービス」と捉え、際限なく求めることがある
制作チームの視点
- 「クオリティ」を最優先し、細部にこだわる
- 技術的・デザイン的な完成度を重視する
- 変更を繰り返すと、まとまりがなくなりクオリティが下がると考える
この違いがあるため、「クライアントが求めるもの」と「制作チームが作るもの」にギャップが生じるのです。
認識のズレによる「思っていたのと違う」問題
クライアントと制作チームが共通のイメージを持たないまま進めると、完成後に「思っていたのと違う」となることが多くあります。
クライアントが「シンプルでスタイリッシュに」と指示しても、制作側の解釈によっては「無機質でミニマルなデザイン」になることもあれば、「シンプルながらも高級感のあるデザイン」になることもあります。
認識のズレがあると、修正の回数が増え、制作チームの負担が増す一方、クライアントも「なかなか思い通りにならない」と不満を抱えることになります。
制作チームのこだわりと、クライアントのビジネス的な要求の対立
制作側は「より良いものを作る」ことを目標にしがちですが、クライアントは「ビジネス上の成果」を重視します。
そのため、デザインの細かい調整や表現のこだわりが、クライアントの目的と合わない場合、摩擦が生まれることがあります。
例として、以下のような対立が発生しやすいポイントがあります。
- 制作側のこだわり:「フォントサイズはこの方が美しい」「余白のバランスを維持したい」
- クライアントの要望:「文字をもっと大きくしてほしい」「情報量を増やしたい」
制作側は「デザインとしての美しさ」を優先し、クライアントは「ユーザーに伝わりやすいかどうか」を重視する。
ここで適切なディレクションがなければ、どちらかが一方的に折れる形になり、不満が残る結果となります。
2. 摩擦を減らすためのディレクション技術
POINT
期待値を適切にコントロールする
摩擦の多くは「最初のすり合わせが不十分だったこと」に起因します。
プロジェクトの初期段階で、以下のようなポイントを明確にしておくことが重要です。
- クライアントが求めている成果は何か(売上向上、ブランド価値の向上など)
- 制作チームが守るべき品質基準は何か(デザインガイドライン、技術要件など)
- 修正や仕様変更が発生した場合、どのように対応するか
この段階で、「どこまでやるのか」「何を重視するのか」を明確にし、両者の認識をすり合わせておくことで、後から発生する衝突を防ぐことができます。
POINT
クライアントと制作チームの橋渡しをする
ディレクターの重要な役割のひとつは、「クライアントと制作チームの橋渡し」です。
どちらか一方の立場に偏ることなく、両者の視点を理解し、適切な落としどころを見つけることが求められます。
具体的には、以下のような調整が必要になります。
- クライアントの抽象的な要望を、制作側が理解しやすい形に翻訳する
- 制作側の専門的な視点を、クライアントが納得しやすい形で伝える
- 変更や追加対応の影響を双方に伝え、現実的な調整案を提示する
ディレクターが適切に橋渡しを行うことで、双方のストレスを減らし、スムーズな進行を実現できます。
POINT
修正対応のルールを明確にする
修正回数や対応範囲を曖昧にしていると、クライアント側からの要望が際限なく増え、制作チームの負担が膨らんでしまいます。
修正の基準を事前に定め、合意しておくことで、トラブルを防ぐことができます。
例えば、次のようなルールを設定すると良さそうです。
- 修正回数の上限を決める(例:「3回まで無料、それ以降は追加費用」)
- 仕様変更や追加対応が発生した場合、費用や納期が変わることを明確に伝える
- クライアントが「とりあえず試してみたい」と言った場合、テスト的な対応として取り入れられるか検討する
このようなルールを設定し、事前にクライアントと合意を取っておくことで、「後から揉める」リスクを減らせます。
まとめ
エンドクライアントと制作チームの摩擦を減らすには、ディレクターが適切に介入し、両者の視点を調整することが重要です。
- 期待値を適切にコントロールし、最初のすり合わせを徹底する
- クライアントと制作チームの橋渡しを行い、双方の認識を一致させる
- 修正対応のルールを明確にし、変更の影響を適切に管理する
このようなディレクション技術を活用することで、プロジェクトのスムーズな進行を実現し、クライアントと制作チームの双方が満足できる成果を生み出すことができるでしょう。