目次
はじめに|なぜ期待値コントロールが必要なのか
プロジェクトの進行において、「クライアントの期待」と「実際のアウトプット」のズレが問題になることは少なくありません。
「思っていたものと違う」「ここも直してほしい」「追加でこの機能も入れられないか」といったクライアントの要望が止まらなくなり、最終的にスケジュールも予算も大幅にオーバーする。このような事態に陥った経験のある人も多いのではないでしょうか。
期待値を適切にコントロールできていないと、次のような問題が発生します。
- 仕様変更や修正が際限なく増えてしまう
- クライアントが「最初の見積もりと違う」と不満を抱く
- 制作チームの負担が増え、品質が落ちる
- 最終的な納品時に「思っていたのと違う」と言われ、手戻りが発生する
こうしたトラブルを防ぐには、プロジェクトの初期段階からクライアントの期待を適切にコントロールし、要件変更や修正が発生した際もスムーズに管理することが不可欠です。本記事では、そのための具体的な方法を解説します。
1. 修正・要件変更が発生する典型的なケース
プロジェクトの途中で仕様が変わったり、修正が増えたりするのには、いくつかの共通したパターンがあります。
クライアントの意見が途中で変わる
プロジェクトが進むにつれてクライアントの考えが変わることは珍しくありません。
当初はシンプルな構成でよかったものの、デザインや機能を実際に見た後で「もっとこうしたい」と要望が増えてしまう。これは、クライアントが最初から完成形を明確にイメージできていない場合に起こりやすい問題です。
事前の要件定義が曖昧だった
プロジェクトの開始時に要件が明確になっていないと、後から「やっぱりこうしたい」「この機能も必要だった」と追加要望が出てきます。要件定義が不十分なまま進めると、途中で手戻りが増え、結果的にスケジュールが破綻する原因になります。
外部環境の変化による仕様変更
市場の変化や社内方針の変更により、クライアントのビジネス要件が変わることもあります。競合他社の動きを見て、「やっぱりこの機能も必要だ」と急遽追加が決まることもあるでしょう。この場合、スケジュールや予算をどこまで調整できるのか、冷静に判断する必要があります。
2. 事前に期待値をコントロールするための戦略
こうした修正・要件変更のリスクを最小限にするには、プロジェクトの初期段階からクライアントとの認識をすり合わせ、適切な期待値を設定することが重要です。
要件定義の精度を高める
プロジェクト開始時に、クライアントと認識をすり合わせることが何よりも重要です。
「こういうデザインになります」「この機能はこう動きます」という説明を、ワイヤーフレームやプロトタイプなどを活用して視覚的に伝えましょう。クライアントが完成形をイメージしやすくなり、「思っていたのと違う」という事態を防げます。
クライアントとの合意形成
要件定義が終わったら、「プロジェクトのスコープ(範囲)」を明確にしておきます。
「今回のプロジェクトではどこまで対応し、どこからは次回のフェーズで検討するのか」をクライアントと合意し、書面に残しておくことで、後から認識のズレが生じるのを防ぎます。
仕様変更や修正対応のルールを決めておく
修正回数の上限や、追加対応が発生した場合の費用・スケジュールの変更について、事前にルールを決めておくことも大切です。
「〇回までの修正は無料、それ以上は追加費用が発生」「仕様変更が発生した場合は、影響範囲を確認した上で対応の可否を判断」など、あらかじめルールを決め、契約書や提案書に記載しておきましょう。
3. 修正依頼が出たときの対応フロー
どれだけ事前に調整しても、プロジェクトの途中で修正や要件変更が発生することは避けられません。
その際、どのように対応するかがプロジェクトの進行を左右します。
変更の影響を即座に評価する
クライアントから修正依頼があった際は、すぐに対応するのではなく、
「この変更がプロジェクト全体にどのような影響を与えるのか?」を冷静に判断します。
- 追加対応が必要な場合、どれくらいの工数が発生するのか?
- 予定している納期に影響は出るのか?
- 他の作業との兼ね合いはどうなるのか?
これらを整理し、クライアントに伝えます。
追加対応のコスト・スケジュールへの影響を伝える
変更内容によっては、スケジュールの見直しや追加コストが必要になることもあります。
「この変更を入れると、納期が1週間延びます」など、具体的な影響を提示し、クライアントに選択肢を与えることが大切です。
4. まとめ
クライアントの期待値を適切にコントロールし、修正・要件変更をスムーズに管理するためには、プロジェクトの初期段階でのすり合わせが重要です。
- 要件定義を丁寧に行い、認識のズレをなくす
- プロジェクトのスコープを明確にし、後から追加要望が出ないようにする
- 変更対応時のルールを事前に決め、契約書に盛り込む
- 修正依頼が発生した際は、影響を即座に整理し、クライアントと冷静に交渉する
こうした工夫を積み重ねることで、プロジェクトの進行がスムーズになり、関係者全員が納得感を持って進めることができるでしょう。